あなたが、お年寄りを訪問する仕事に就いていたとします。
ピンポーン♪とインターホンを鳴らしても、返事が無い。
気が付かないのかな、まあよくあることだよねと思い、お家に入ります。
すると。
部屋の中から、「助けて!!!」と、声が聞こえます。
あなたは、何があったの!?と慌てて部屋のドアを開けます。
すると、ここの住人の方がベッドから滑り落ちて、床に仰向けに転倒していました。
「助けて!!はやく!!」
そう言われて、あなたはあわてて、その方を床からベッドに一気に引っ張りあげました。
・・・で、どこか痛めて私のところに施術を受けに来るか、または、「これじゃいけない」と思ってキネステティク・クラシック ネオを受けに来る。
とてもよくある話です。
訪問先だけでなく、病室や施設の居室なこともありますね。
みなさんだったら、こういうとき、どうしますか?
最初にしないといけないことって、何だと思います?
いろいろ答えはあるでしょうし、正解はないと思いますが。
私のアドバイスは「まず自分が落ち着きましょう」です。
すぐになんとかしなくていいんです。
相手の方は要望をいろいろ言ってきているかもしれませんが、それにすぐに答えようとしなくていいんです。
相手の方は、今、混乱している可能性が高いです。
混乱していて動けない当事者と、落ち着くことが出来る動ける訪問者なら、訪問者の判断の方が信頼できると思いませんか。
ここで混乱したら冷静な判断が出来る人が居なくなります。
ぜひ落ち着いてください。
ここで、
「落ち着いている場合じゃない!!相手の気持ちを考えてみろ!!」
という意見もあるかもしれませんね。
ここで言う相手の気持ちって、なんでしょう。
「助けて!!」と言ってますね。
「はやく!!」もありましたね。
でも、この「助けて!はやく!」というのは、「あなたも慌てて!急いで!私を一気に床から引っ張りあげて、元のようにベッド上に戻してください!」なのでしょうか。
「助けて」とは、「今の自分は好ましくない状況にいるけれど、一人で状況を変えることが出来ない。だから、状況が良くなるように、手伝って」というSOSですね。
望んでいるのが「滑り落ちたときに怪我をしたので手当てして欲しい」なら手当てを手配する。
「床は寒いからあったかくなりたい」なら、毛布をかける。
「床は固いから柔らかいとこに寝たい」なら、布団を床に強いてその上に移ってもらう。
「床は地面に近くて不安だ」なら、とりあえず床に座ってもらうう。
「床で冷えたのでトイレに行きたい」なら、トイレに行けるように補助する(たとえば、よつんばいで行ける人ならそれを手伝うとか、ポータブルトイレがあるならそれを使うのを手伝うとか)。
「床に落ちたのがショックで話を聞いて欲しいので、話を聞いて共感して欲しい」なら、話を聞いて相槌を打つ。
それが「助ける」じゃないでしょうか。
じゃあ「はやく」はどうか。
一気に、でしょうか。
でも、お年寄りって、普段、そんな速さで動きますっけ?
自分が動ける速さじゃない速さで動かされるのは、身体にとっては、負担です。
はやくは、多分、速くじゃなくて、早く。
速度じゃなくて、タイミング。
「今すぐ私になにかしらの関わりをしてください」という意味かもしれません。
そう考えると、一気に動かすんじゃなくて、例えば、「大丈夫ですか?痛いところはありますか?」と声をかけながら様子を見るだけでも、「はやく助けた」ことになるんじゃないかと思います。
そして、そもそも、床からベッドまで一気に引っ張あげるのは、身体的には全然助けたことになりません。
一気に引っ張りあげられたら、引っ張りあげられる人の方も相当つらいからです。やってみるとわかりますが、痛いし緊張するしで、申し訳ない気持ちになるしで、いいことありません。
ということは、引っ張りあげてベッドに戻すのは、介助者の身体を傷める上に、介助を受ける方のご要望ですらないということになります。
ということで、慌てることは何もいいことを生みません。
ぜひ、焦らず冷静に判断をして、今自分に出来ることを丁寧にやっていただければと思います。
落ち着いたら、そのあとは?
介助する人もされる日ともお互いつらくなくほっとするために、具体的にどうしたらいいの?という方は、ぜひこちらをご覧ください。
講座や施術などの最新の予定は、こちらをご覧ください。
お問い合わせはこちらからどうぞ。