前も書いたんですが、昔、流通業におりました。
物を売る方法を考えたり、売り場を作ったりしてました。余談ですが未だに東京商工会議所の販売士2級を持っています(更新期間が長いんですよ)。
人間、最初に身に着いた習性は変わりにくいもので、これからのサービス業とか物販の行く末を考えると、キネステもほんとは一見全然関係ない業種の人にこそ知ってほしいんですけども。
ということを、以前とあるサービス業の偉い人に話したけど、ぜんっぜん伝わりませんでした(爆)資料とか何も持っていなかったのと、時間も場所も無かったので、仕方ないんですが。
その後、またそれに関するいろいろなことがありましたので、今日はそのことをブログに書きます(前置き長い)。
昔勤めていた場所は、東京都中央区日本橋馬喰町というところです。
知らない人は知らないと思いますが、ここは江戸時代から問屋街でした。現在も繊維と小物の問屋街です。繊維関係や美容のお仕事についている方は、この辺に足を運んだことのあるかたもいらっしゃることでしょう。
勤めていたのは10年以上前なのですが、なぜかその後も仕事が変わってもずっとそのあたりと縁が切れずに、ずっと界隈をうろついています。
あの界隈は、この10年の変化がものすごいです。問屋が軒並みつぶれてます。そこにマンションとか、スーパーとか、最近だと小洒落たお店とかできてきて、まあそれは置いといて。
問屋がつぶれるということは、小売店がつぶれてる(または売れていない)ということです。地方に行くとシャッター商店街とか見ない街は無いですが、それも当然です。だって、人口が減っているし減った人口の構成が以前よりも確実に高齢化しているんですから。お年寄りは既に物を持っているし(だから断捨離とか終活とか流行るんです)、出かけないから外出着とか靴とかアクセサリーとかそれほど買わなくてもどうってことありません。
そりゃ物も売れません。
飲食業はどうかというと、訪問先の方で昔は食べ歩きが好きだったという方が、たくさんいらっしゃいますが、今はもういいわという方が多いです。
階段のある店には行きにくいとか、お店が狭いから車椅子では行きにくいとか、座敷のお店は膝が痛いとか、一緒に食べ歩いた友達が亡くなって一人ではつまらないとか、いろいろ理由はありましたが、お一人の方が言った言葉が衝撃でした。
「みんなでご飯を食べるときは、ファミレスに行くのよ」
そのファミレスも低価格ファミレスとして有名なところです。
都心のタワーマンションに住んでいる、けっこうお金のある方ですよ。百貨店に行くと担当の外商さんがつく、っていうか外商さんを「お帳場さん」って言ってる様な人ですよ(帳場は外商の昔の言い方なんで、この言い回しだけで昔からお金持ちの方なんですねーっていうのが分かる)。
なんでファミレスに行ってるのかというと、お話から分かった理由は三つありました。
・気兼ねが無い
・近い
・車椅子のまま食事できる
確かに、そのファミレスは、マンションからすぐのところにありました。
2階だけど、エレベーター完備。
通路が広くて、椅子をどかして車椅子を置くのも簡単(ファミレスって子供椅子が置いてありますよね。あれがあることで、お客が椅子を勝手に変える、または店員さんに変えてもらうことは当たり前のことで、気を遣わなくても良いという認識になっているんだと思います)。
気兼ねという点では、テーブルクロスはビニールクロスだし、子供さんが行って盛大にこぼしたりしてる店ですから、こぼしがちなお年寄りが行っても気にしないで食事できるわけですね。
こういう人、少なくないんですよ。
広島の飲食業の方々が、接遇対策としてNKAの中本さんからキネステの研修を受けられたそうです。理由のひとつは、お客様の高齢化。すごい先見の明のある会社だと思いました。キネステ的に落ち着いてご飯が食べられる環境があって、適切なお手伝いが出来るスタッフさんがいたら、いくつになっても安心して外食できますよね。また、先日石巻に行ったときに、おうちが飲食業だという方がいたのですが、椅子の高さとかテーブルの高さとか、居心地が良くて食欲を妨げないという観点から見たらいいかもしれないね~と話していました。
キネステでは、動きの分析をします。動きの中には、「食べる」とか、「座る」とかが入ってきます。なので、先日のこのお店のように、椅子の高さはこれで良いんだろうかとか分析をすることが出来ます。でも、あの店はちょっと離れているとはいえターミナル駅と繁華街に近く(=潜在的なお客さんの数が多い)、そこそこの価格で回転率を上げたい店で、高齢者と子供は来なくても良いような店なので、ああいう椅子で、ある意味正解なんです。
お客さんが沢山いる時代は、味やお店の雰囲気や立地がよければ、そんなこと気にしなくて良かったかもしれません。でも、これから人口は減り、高齢者が増え、若者の所得は増えない時代になります。逆に言うと、ある程度高齢の人の方が使ってくれる可能性のあるお金を持っている時代になるのですから、その客層にあわせた接遇や環境を整えたほうが商売上有利になると思いませんか。
物販のお店でも、同じことです。人口は減り、高齢者が増え、若者の所得は増えない時代になり、今まで通りには物は売れなくなります。
・・・というところでなんですが、飲食の例を書きすぎて長くなったので、物販の話はまた次回。
ちなみに、飲食と物販は、キネステでの概念の役に立つ部分の比重が違います。
キネステ用語で言うと、飲食は環境が一番重要だと個人的に思います。
が、物販はそうじゃないんです。
物販で重要な概念は何なのかは、次回をお楽しみに~。
画像は石巻の刺身です。すごかった、刺身(このお店は一見掘りごたつ風の座敷というなんちゃって掘りごたつで環境的にはややがっかり、でも料理が素晴らしくて店員さんが親切だったので最終的に環境はどうでもよくなりましたという良い例)