昨日の「特別展『きもの KIMONO』に行ってきた・1 事前情報と入館まで」の続き、展示の感想です。
展示は、平安時代の小袖から始まって、現代の美術品としての着物で終わっています。
着物の現物や屏風などが展示されていて、とても楽しめました。着物を飾る為の染色、刺繍、織りの工夫、柄を絵羽にして絵画のように染める技法、その時々の流行がよく分かります。圧倒的転換点なんだなと思ったのは、友禅染めの開発前後の解説。現物を見ると友禅の技術は革命だったんだなと実感します。染色やプリント技術が当たり前の今見ても凄さは分かりにくいでしょうけど、糊を置いて線を表現することの難しさを思えばほっそーい線を何本も描いて表現された着物の気の遠くなるような技術力よ…とめまいがしました。
現代に近くなると、銘仙がずらりとコーディネートされてます。バラエティの豊かさと、有名画家が手掛けた銘仙の宣伝ポスターを見ると、当時の絹織物産地はかなり羽振りが良かったんだろうなと…現状から過去を思うと切ないレベルです。
伝統産業の衰退の新聞記事やなんかが時々出ますが、そういった技術は日常の中にないと保存は難しいです。
今年の初めだったか、和裁のこてのメーカーさんの廃業をフェイスブックでシェアしましたが、結局は着物を縫う人が減ったから作られなくなった訳です。縫う人が減ったのは、着る人が減ったから。付帯産業がみんな傾いたのも、着る人が減ったから。そして中古書店と同じで、着物リサイクル市場が出来たからというのもあります。リサイクル着物を着ても新しい反物が売れなくなると生産者も販売者も立ちゆきません。
芸術やおしゃれ着としての着物だけが残されても、日常から着物が消え去ると、今後には残らないんです(多分)。
とはいえ時代の流れですから、どうしようもないんですけども。着物を自分で縫うのが珍しくなかった世代は、既に後期高齢者です。
今回会場で着物の人はひとりしか見ませんでした。七月になってしまったので仕方なかったかなーとは思いますが、もう少し寛容でおおらかな世の中になると、もっと気軽に生きられるのではないかと思います。
ちなみに私は着物地で縫った沖縄のパカマと、見た目はシャツな袖無し短半着を着て行きました。後期まで開催されたらもう一度行くと思うので、その時は対丈に細帯の緩すぎる着物で行くかもしれません(下手な洋服より涼しいので最近よくそんな格好をしています…)。
あまり役に立たない感想ですが、本日は以上です。
後期も行けたら、人の少なそうな日の少なそうな時間に行って来たいと思います。