車椅子は、椅子じゃない

昨日のキネステティク・クラシック ユニット6兼練習会で、車椅子の話がありました。
車椅子からベッドやポータブルトイレへの移乗のことが話題になったあとに、お悩みの相談が。
「車椅子に座ってると疲れると言って、ベッドに横になることが多くて…寝ていたら運動量が減りそうで、心配です」と。
この場合、なるべく寝ないで車椅子に座っていて!…と言いたくなりそうですが、それは、ちょっと待って欲しいのです。
何でかというと、タイトル通り、
「車椅子は、椅子じゃない」からです。

車椅子は、移動のための道具です。
しかも、どちらかというと、移動を介助する人に都合のよい、移動のための道具なことが多いです(自走に向いた車椅子とかは別として)。
どういう意味かというと。

まず、大半の車椅子は、長時間座っていて快適なようにはできていません。
知っている方で、以前、とても高価な車椅子を購入した方がいました。サンプルに座ってみて快適だったから、これなら楽に過ごせると思ったそうです。結果的には、その車椅子で1ヶ月ほど過ごしたあと、元のシンプルな車椅子に戻されました。
理由は、新しい車椅子は、体にフィットするように作られていて、ひとりでは思うように身動きが取れず、長時間座っていなくてはいけない日常生活の中で、背中や腰に痛みが出てしまったためです。
日常座る椅子で、フィット性が高くて、身動きできない椅子って、ありますか?
もうひとつ、長時間座る椅子としては向かない点に、座面の性質があります。
車椅子の座面は、椅子と比べると、柔らかいことが多いです。柔らかいというのが、座面が布地である場合と、低反発素材のようなクッション性に富んだものの時がありますが、どちらにしても、押した力の反発を利用して自分で動くためには、柔らかすぎる素材であることは同じです。
日常座る椅子でも、ふかふかのソファーなどは、動くためには柔らかすぎる素材です。一度座ったら立ちたくないような、いわゆる「人をダメにするソファー」などです。健康な人は、一度座ったら立ちたくない、で済みますが、力を出しにくいご年配のかたや身体にトラブルのある方は、立ちたくない、ではなく、一度座ったら立てない、になる可能性が高いです。

次に、車椅子に座った状態で自分で動くときのことを考えてみると、車椅子に深く腰掛けると足が床につかないように出来ているので、足を使って楽に動くことが出来ません。
よくある車椅子には、フットレストがついています。フットレストがついているということは、そこに足が乗るようにできているということです。フットレストは、床より10数センチ高い位置にあります。フットレストが高くないと、車椅子が動いたときに擦れて動かなくなってしまいますから、高い位置にあるのは当然です。
その、高い位置にフットレストがあるということは、フットレストを上げて足を下ろしても、足がしっかり床につくことは無い、ということです。足がしっかりつかないと、立ちにくいですし、足を使って車椅子を漕ぐことも難しくなります。
足の着かない椅子から立ってみるには、一度地面に足が着く状態にしなくてはいけません。椅子に座っていて足が床についていない状態から足を着けるには、今座っている位置から前に出て、浅く座りなおす必要があります。立つためには、このアクションが一段階増えることになります。
そして、もし、座っているところの座面が柔らかかった場合、前に出て浅く座ることが、自力では非常にやりにくいことがあります。ふかふかソファーに座る機会があったら試してみて頂きたいのですが、ふかふかソファーの上で身体をずらす一番簡単な方法は、半分立ちかけて、お尻を浮かせてずらすことです。でも、足がつかなければ、半分立ちかけることは出来ません。ということは、足が床に着かなくて、座面が柔らかい車椅子で自力で動くのは、相当に困難なことだということになります。

以上の理由で、車椅子で座っていて疲れるという方には、できれば足の着く高さの椅子に座ってみることをお勧めしました。
椅子に座っていたら動くときに大変と思うかもしれませんが、椅子から車椅子に移ることもリハビリと考えて、大変なのではなくてリハビリの機会が増える、と思ってみてはいかがでしょう。
しかも、キネステの考え方を使えば、介助する方もされる方もそれほど大変ではなく乗り移ることができます。
ひとりが沢山の方のケアをしないといけない施設では難しいかもしれませんが、そうではない場合、出来れば日常で車椅子に座り続ける時間はあまり長くならない方が、ご本人の身体の動かしやすさという点では良いのではないかと思います。

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